帰国前後にRSUがある場合の確定申告|権利確定日と居住区分で考える

海外勤務中にRSU(Restricted Stock Unit・譲渡制限付株式ユニット)を付与され、権利確定(vest)を残したまま帰国するケースは、帰国者の確定申告の中でも判断を誤りやすい論点です。

結論から言うと、RSUは「付与された時」ではなく、権利確定(vest)や売却といった、それぞれの時点の居住区分で課税を整理するのが出発点です。帰国後にvestしたRSUは、海外勤務中に付与されたものでも、原則として日本の課税対象になり得ます。

この記事の対象となる方

外資系企業・海外法人での勤務中にRSUを付与され、未確定分(unvested)を残して日本へ帰国する方、帰国後もRSU付与が続く方を想定しています。ストックオプションをお持ちの方は帰国とストックオプションの税金もあわせてご覧ください。

前提: 3つの時点を区別する

RSUの課税を考えるときは、次の3時点を必ず分けて整理します。

時点 何が起こるか 課税の性質(一般的な整理)
付与日(Grant) RSUが割り当てられる この時点では原則課税されない
権利確定日(Vest) 株式が実際に交付される 交付時の株価相当の経済的利益が給与所得等として課税対象になり得る
売却日(Sale) 株式を売却する vest時の価額と売却価額の差が譲渡所得として課税対象(国税庁タックスアンサーNo.1463)

「いつ付与されたか」ではなく「いつvestしたか・いつ売ったか」が、日本の課税を考える起点になります。

帰国前(非居住者期間)にvestした分

日本の居住者になる前にvestしたRSUは、非居住者期間の所得です。非居住者は国内源泉所得のみが日本の課税対象のため、海外勤務に対応するvest益は原則として日本では課税されません(この期間に日本勤務期間対応分が含まれる場合は別の検討が必要です)。

この整理があるため、帰国のタイミングとvestスケジュールの関係は、帰国前に一度確認しておきたいポイントです。vestの直前に居住者になるか直後になるかで、日本の課税対象に入るかどうかが変わり得ます。

帰国後(居住者期間)にvestした分

帰国して居住者(非永住者以外)になった後にvestしたRSUは、原則としてvest益の全額が日本の課税対象になり得ます。付与や勤務が海外時代のものであっても、「海外勤務分だから日本は関係ない」とはならない点に注意してください。給与と同様、勤務地では課税判定しないという帰国者税務の原則(帰国年の確定申告 完全ガイド参照)と同じ構造です。

その上で、次の2つの調整・例外の検討対象になります。

海外側でも課税される場合の二重課税調整。 vesting期間(付与からvestまで)のうち海外勤務期間に対応する部分は、付与国側でも課税されることが多くあります(例: 米国は勤務期間按分で課税するのが一般的です)。同じ利益に日本と海外の税金が重なる部分は、外国税額控除(No.1240)や租税条約による調整の検討対象です。按分の計算方法や控除できる範囲は、付与国の税制・条約・vestの条件によって変わるため、個別判断の領域です。

非永住者に当たる場合。 外国籍の方で非永住者に該当する間は、vest益のうち国外源泉所得に当たる部分(国外勤務期間対応分)は、国内払い・国内送金がなければ課税対象に含まれない場合があります(No.2010)。該当性と源泉の区分は資料に基づく確認事項です。

売却した分: vest後の値動きは譲渡所得

vestした株式を売却すると、vest時の価額を取得費として、売却までの値上がり益が譲渡所得として申告分離課税の対象になります(No.1463)。居住者になった後の売却は、海外の証券口座での売却でも日本の申告対象です。

実務では、(1)vest時の給与課税分と売却時の譲渡課税分を混同して二重に計上してしまう、(2)取得費(vest時価額)の円換算資料が残っていない、という2つのつまずきが典型です。vestごとの明細(vest日・株数・時価)は必ず保存してください。

帰国翌年以降: 保有し続ける場合

  • 海外の証券口座で株式を保有し続ける場合、配当は毎年の申告対象になり得ます
  • 12月31日時点の残高によっては、株式を含む国外財産が国外財産調書の対象になります(No.7456。国外財産調書の解説参照)
  • 帰国後もRSU付与が続く場合、以後のvestは通常の給与課税として毎年続きます

チェックリスト: 帰国前に整理しておくこと

  • RSUのvestスケジュール一覧(付与日・vest日・株数)を入手した
  • 帰国予定日とvest日の前後関係を確認した
  • 過去のvest明細(vest日の時価が分かるもの)を保存した
  • 付与国側でのRSU課税の扱い(源泉徴収の有無・按分方法)を確認した
  • 売却予定の有無と、売却時の取得費資料の所在を確認した
  • 帰国後の12月31日時点で国外財産が5,000万円を超えそうか概算した

よくある誤解

「海外勤務中にもらったRSUだから日本では課税されない」 — 課税は付与日ではなくvest日・売却日の居住区分で整理します。帰国後のvest・売却は原則日本の課税対象になり得ます。

「海外の証券口座の中で完結していれば申告不要」 — 居住者(非永住者以外)は口座の所在地にかかわらず全世界の所得が対象です。海外口座内の売却益・配当も申告対象になり得ます。

「海外で税金を引かれたから日本では払わなくていい」 — 自動的に相殺されるわけではなく、日本で申告した上で外国税額控除等の調整を検討する、という順序になります。控除しきれない場合もあります。

相談するタイミング

vestスケジュールが帰国をまたぐ方は、帰国日を確定させる前のご相談が最も効果的です。帰国済みの方は、vest明細と海外の課税資料が揃っていれば、申告期でも整理は可能です。資料が海外の人事・証券会社にしかない場合があるため、取り寄せは早めに始めてください。

当事務所では、まず15分の無料オリエンテーションで対応可否と進め方をご案内し、按分計算や条約適用など個別の判断が必要な内容は資料を拝見した上で個別相談にてお答えしています。

参考資料(公式)

※ 本記事は一般的な情報の整理であり、RSUの課税は付与条件・vestの設計・付与国の税制・租税条約によって結論が変わります。ご自身のケースへの当てはめは、付与契約とvest明細を確認した上での個別のご相談をご利用ください。

監修この記事の監修浅井匠也(税理士・公認会計士)プロフィール →

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を行うものではありません。 記載内容は公開日または最終更新日時点の法令等に基づいています。 個別のご事情への適用については、必ず税理士等の専門家にご確認ください。
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