帰国者のための外国税額控除の基本|二重課税はこう調整する

帰国して日本の居住者になると、海外の給与・利子・配当・年金なども日本の課税対象に入ってきます。ところが、それらの多くは海外側でも課税されているため、同じ所得に日本と外国の税金が二重にかかる状態が生じます。

この二重課税を日本側で調整する中心的な仕組みが外国税額控除です(国税庁タックスアンサーNo.1240)。結論から言うと、外国で納めた税金は、日本で申告した上で、一定の限度額の範囲内で日本の所得税から差し引くことができます。「海外で払ったから日本では申告しない」でも、「全額が自動的に返ってくる」でもない、という位置づけを最初に押さえてください。

この記事の対象となる方

帰国後も海外に所得源(給与の残り・利子・配当・不動産収入・年金など)がある方、帰国年に海外勤務分の給与へ日本と海外の課税が重なった方を想定しています。

前提: 調整の順序は「日本で申告 → 控除」

外国税額控除の基本の流れは次のとおりです。

  1. 海外の所得も含めて、日本の確定申告にいったん全部含める(居住者・非永住者以外の場合)
  2. その所得に対して外国で納めた税額を集計する
  3. 控除限度額の範囲内で、日本の所得税額から差し引く

つまり、外国税額控除は「申告しなくてよくなる制度」ではなく、「申告した上で税額を調整する制度」です。帰国者の申告漏れは、この順序の誤解(よくある誤解参照)から生じることが少なくありません。

論点1: 控除には上限がある — 控除限度額の考え方

外国で納めた税金が、無制限に日本の税額から引けるわけではありません。控除できるのは、おおまかに言うと日本の所得税額のうち国外所得が占める割合に対応する部分が上限です。

一般化した設例で言えば、所得全体のうち国外所得が2割なら、日本の所得税額の概ね2割が控除の上限になる、というイメージです(実際の計算は調整項目があります)。外国側の税率が日本より高い場合などには、払った外国税の全額は引ききれないことが起こります。

控除しきれなかった分・限度額が余った分は、翌年以降3年間の繰越の仕組みがあります。帰国年は国内所得と国外所得の構成が特殊になりやすく、限度額の出方も特殊になりがちです。ここは試算を含めて個別判断の領域です。

論点2: 対象になる外国の税金かどうか

控除の対象は、外国の法令に基づいて所得を課税標準として課される、日本の所得税に相当する税(外国所得税)です。実務上の確認ポイントとしては、次のようなものがあります。

  • 所得税に相当しない税(財産税・登録料など)は対象外です
  • 租税条約の限度税率を超えて源泉徴収された部分は、外国税額控除ではなく、外国側での還付手続きの検討対象になります(例: 条約上10%のはずが現地で30%引かれている場合、超過分は現地還付の話)
  • 現地で後日還付された税金は控除の対象から除きます

どの国の・どの税金が対象かは、国と所得の種類ごとの確認事項です。

論点3: 帰国年に起こりやすい場面

帰国後に支給された海外勤務分の給与。 給与は支払日基準で判定するため、帰国後支給の給与は海外勤務分を含めて日本の課税対象になり得ます(帰国年の給与の解説参照)。同じ部分に海外側も課税していれば、外国税額控除や租税条約(短期滞在者免税等)の検討対象です。

海外の利子・配当。 現地で源泉徴収された上で、日本でも申告対象になるケースの典型です。条約の限度税率の確認とセットで整理します。

海外の年金。 受給時に現地で課税される場合、日本の申告と二重になり得ます。年金は条約によって課税できる国が決まっている場合があり(居住地国のみ課税の条約もあります)、控除の前にそもそもどちらの国に課税権があるかの確認が先に来ます。

非永住者の場合。 非永住者は国外源泉所得の課税範囲が限定されるため、外国税額控除の対象・限度額の計算も通常と異なります。該当する方は個別にご確認ください。

必要資料: 「外国で税金を納めた証明」を残す

外国税額控除の適用には、外国所得税を課されたことを証明する書類等が必要です。帰国前から次を確保してください。

  • 海外のTax Return(確定申告書)の控えと納税証明
  • 給与からの源泉徴収が分かる書類(現地の源泉徴収票に相当するもの・最終給与明細)
  • 利子・配当の支払通知(源泉徴収税額の記載があるもの)
  • 年金の支払通知・現地課税の記録
  • 現地で還付を受けた場合はその記録

とくに現地のTax Returnは、帰国翌年に現地で申告して初めて確定することもあり、日本の申告期限との時間差が実務上の悩みどころです。時期がずれる場合の取り扱いも含めて、早めに段取りを決めておくと安心です。

よくある誤解

「海外で課税済みの所得は日本の申告に入れなくていい」 — 逆です。日本の申告に含めた上で、外国税額控除で調整します。申告から外すと、控除どころか申告漏れになります。

「払った外国税は全額戻ってくる」 — 控除限度額があります。外国側の税率や所得構成によっては引ききれず、繰越の検討になります。

「条約より高く源泉された分も日本で引けばいい」 — 条約の限度税率を超える部分は、原則として外国側での還付手続きの話です。日本の控除に含められない場合があります。

「証明書類は後からいつでも取れる」 — 帰国後に海外の書類を取り寄せるのは時間がかかります。口座やオンラインアクセスが閉じられて詰まるケースもあります。現地にいるうちの確保が確実です。

相談するタイミング

外国税額控除は、帰国年の申告設計と資料集めを同時に進めるのが効率的です。理想は帰国前、遅くとも帰国年のうちに、海外側の課税状況(何に・いくら課税されているか)を一覧にしてご相談ください。限度額の試算や条約の当てはめは、資料が揃ってからの個別判断になります。

当事務所では、まず15分の無料オリエンテーションで対応可否と進め方をご案内し、個別の判断が必要な内容は資料を拝見した上で個別相談にてお答えしています。

参考資料(公式)

※ 本記事は一般的な情報の整理であり、控除の可否・限度額は所得の構成・外国側の課税・租税条約によって結論が変わります。ご自身のケースへの当てはめや税額の試算は、資料を確認した上での個別のご相談をご利用ください。

監修この記事の監修浅井匠也(税理士・公認会計士)プロフィール →

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を行うものではありません。 記載内容は公開日または最終更新日時点の法令等に基づいています。 個別のご事情への適用については、必ず税理士等の専門家にご確認ください。
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