帰国した年の国外財産調書|5,000万円基準・提出期限・対象財産

海外に銀行口座・証券口座・不動産・年金資産を残して帰国した方には、確定申告とは別の報告義務が待っています。それが国外財産調書です。

結論から言うと、その年の12月31日時点で合計5,000万円を超える国外財産を持つ非永住者以外の居住者は、翌年6月30日までに国外財産調書を提出する義務があります(国税庁タックスアンサーNo.7456)。所得が少なくても、財産を「持っているだけ」で対象になり得る点が、確定申告との大きな違いです。

この記事の対象となる方

海外の口座・不動産・年金資産などを残したまま日本へ本帰国した方、これから帰国する方を想定しています。帰国した年の12月31日が最初の判定日になるため、帰国初年から対象になり得ます。

前提: 提出義務の3要件

次の3つをすべて満たすと提出義務が生じます。

要件 内容
人 非永住者以外の居住者であること(非永住者・非居住者は対象外)
金額 その年の12月31日時点の国外財産の合計が5,000万円超
期限 翌年6月30日までに所轄税務署へ提出

日本国籍の方が本帰国した場合は原則「非永住者以外の居住者」に当たるため(居住区分の解説参照)、判定は実質的に「年末の国外財産が5,000万円を超えるか」に絞られます。

なお、帰国した年の途中まで非居住者だった場合でも、12月31日時点で非永住者以外の居住者であれば、その年分から対象です(提出義務は12月31日の現況で判定します。FAQ問2)。「帰国1年目はまだ関係ない」という猶予はありません。

細かい特例として、相続があった年の調書は相続で取得した国外財産を除いて判定・記載できるほか、提出期限までに死亡・出国した場合は提出を要しないこととされています(FAQ問2)。該当しそうな場合は個別にご確認ください。

対象になる財産・ならない財産

国外財産とは、国外にある財産をいい、代表的には次のものが該当し得ます。

  • 海外の銀行口座の預金
  • 海外の証券口座で保有する株式・債券・投資信託(RSUで取得し海外口座にある株式を含む)
  • 海外の不動産
  • 海外の保険・年金資産など

財産の所在が国内か国外かは、財産の種類ごとに定められた所在判定によります(預金は預け入れた営業所の所在地、不動産はその所在地、など)。

確認事項として扱うべきものもあります。米国のIRA・401(k)のような退職年金口座は、口座の性質(年金受給権か、株式等の保有か)をどう整理するかで調書上の記載が変わり得るため、財産区分を断定せず、制度内容と残高資料に基づいて個別に確認することをおすすめします。なお、国外で加入した確定拠出型年金に関する権利の価額は、12月31日に解約した場合の解約返戻金相当額によることができる整理がFAQで示されています(FAQ問31)。Roth IRAについては個別記事もご覧ください。

評価と為替換算: 12月31日時点で数える

調書に記載する金額は、その年の12月31日時点の価額(時価または見積価額)です。外貨建ての財産は、取引金融機関が公表するその年12月31日の最終の対顧客直物電信買相場(TTB)またはこれに準ずる相場で邦貨換算します(国外財産調書FAQ問18)。12月31日にこれらの相場がない年は、同日前の最も近い日の相場(12月30日など)によります。預貯金は、預け入れている金融機関が公表する相場を用います。

評価方法・換算方法は財産の種類ごとにFAQで細かく整理されているため、迷う財産(非上場株式・保険・年金受給権など)はFAQの該当問を確認するか、資料を揃えてご相談ください。

実務上の注意点を2つ挙げます。

  • 共有名義の財産(ジョイントアカウント・joint tenancy等を含む)は、持分が定まっていればその持分に応じて按分し、持分が明らかでない場合は各共有者の持分を相等しいものと推定して按分した価額を各人の調書に記載します(FAQ問15)。その前提として「そもそも誰の財産か」(名義と資金拠出の関係)の整理が必要な場合があり、ここは資料に基づく確認事項です
  • 5,000万円の判定は財産の合計額で行います。口座単位・国単位ではありません。円安の年は、現地通貨ベースで変わらなくても円換算で基準を超えることがあります

提出する・しないで何が変わるか

国外財産調書には、提出を促すためのアメとムチの仕組みがあります。

  • 提出していた場合: 記載された国外財産に関して所得税等の申告漏れが生じても、過少申告加算税等が5%軽減されます
  • 提出していなかった場合(記載不備を含む): 同じ場面で加算税が5%加重されます
  • 正当な理由のない不提出・虚偽記載には罰則(1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)も定められています

「出しておけば守られ、出さないと重くなる」仕組みと理解してください。

帰国前・帰国年・翌年以降のタイムライン

  • 帰国前: 海外資産の一覧(口座・残高・名義)を作り、年末残高の資料を入手できる状態にしておく。5,000万円を超えそうかの概算はこの段階でできます
  • 帰国年: 12月31日時点の残高資料(ステートメント等)を各機関から確保する
  • 帰国翌年: 6月30日までに調書を提出。確定申告(3月15日)とは期限が別である点に注意
  • 翌年以降: 基準を超える限り毎年続きます。財産債務調書(No.7457)との関係も、所得・財産の状況によって毎年確認が必要です

チェックリスト: 調書の準備

  • 海外の口座・不動産・保険・年金資産の一覧を作った
  • 各財産の12月31日時点の残高・評価資料を入手した
  • 共有名義の財産について、持分と資金拠出の関係を整理した
  • IRA・401(k)など年金口座の制度資料を手元に揃えた
  • 年末の為替相場で円換算し、合計が5,000万円を超えるか確認した
  • 提出期限(翌年6月30日)をカレンダーに入れた

よくある誤解

「確定申告をしたから調書は不要」 — 別の制度です。所得の申告(3月15日)と財産の報告(6月30日)は、対象も期限も異なります。

「日本に送金していない財産は書かなくていい」 — 送金の有無は関係ありません。12月31日時点で保有している国外財産が対象です。

「帰国した年はまだ対象外」 — 12月31日時点で非永住者以外の居住者なら、帰国初年から対象になり得ます。

「5,000万円は1口座あたりの基準」 — 全財産の合計額での判定です。分散していても合算します。

相談するタイミング

調書は「年末残高の資料が揃うか」がすべてです。海外の金融機関は年末ステートメントの発行に時間がかかったり、帰国後は口座へのアクセスが制限されたりすることがあるため、帰国前に資料の取得経路を確保しておくことが最大の準備になります。初めての提出年は、対象財産の範囲の整理からご相談ください。

当事務所では、まず15分の無料オリエンテーションで対応可否と進め方をご案内し、財産区分の整理や評価など個別の判断が必要な内容は資料を拝見した上で個別相談にてお答えしています。

参考資料(公式)

※ 本記事は一般的な情報の整理であり、対象財産の範囲・評価・記載方法は財産の内容によって個別の確認が必要です。ご自身のケースへの当てはめは、残高資料を確認した上での個別のご相談をご利用ください。

監修この記事の監修浅井匠也(税理士・公認会計士)プロフィール →

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を行うものではありません。 記載内容は公開日または最終更新日時点の法令等に基づいています。 個別のご事情への適用については、必ず税理士等の専門家にご確認ください。
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