非居住者から居住者へ|帰国で課税範囲はどう変わるか

海外に住んでいた間、日本の税金は「日本国内で生じた所得だけ」が対象でした。帰国して居住者になった日を境に、この課税範囲が全世界の所得へと一気に広がります。帰国者の税務で起こる論点のほとんどは、この「切り替わり」から生じています。

この記事では、非居住者から居住者への切り替わりで何が・いつから・どう変わるのかを整理します。「いつ切り替わるのか」という判定基準そのものは、帰国後いつから「居住者」になる?判定基準と実務の考え方をご覧ください。

この記事の対象となる方

海外勤務や海外生活を経て日本へ本帰国し、非居住者から居住者へ切り替わる(切り替わった)方を想定しています。帰国前の計画段階の方が読むと、いちばん効果のある内容です。

前提: 3つの区分と課税範囲のおさらい

所得税法上の区分と課税範囲は次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.2010)。

区分 課税される所得の範囲
非居住者 国内源泉所得のみ
居住者(非永住者) 国外源泉所得以外の所得+国外源泉所得のうち国内払い・国内送金分
居住者(非永住者以外) すべての所得(全世界所得)

日本国籍の方は、帰国して居住者になると原則「非永住者以外の居住者」です。切り替わりは年単位ではなく、帰国日を境に年の途中で起こります。

帰国前(非居住者期間): 課税は国内源泉所得だけ

非居住者の間、日本の課税対象は国内源泉所得に限られます。帰国前の時点で日本との接点として多いのは、次のようなものです。

  • 日本国内の不動産の賃貸収入: 非居住者でも日本で申告対象です
  • 国内払いの給与・報酬: 多くは源泉徴収(税率20.42%)で課税され、課税関係が源泉分離で完結するものもあります
  • 国内の預金利子など: 源泉分離課税で完結し、申告不要です

一方、海外勤務に基づく給与や、海外の利子・配当・不動産収入は、この期間は日本の課税対象外です。海外側の税制だけを見ていれば足りる、シンプルな状態といえます。

帰国日: 切り替わりの瞬間に何が起こるか

居住者になった日から、その日以後に生じる所得は原則すべて日本の課税対象になります。具体的には次の変化が起こります。

海外の所得が日本の申告対象に加わります。 海外口座の利子・配当、海外不動産の賃貸収入、海外年金の受給などは、居住者になった日以後の分から日本の確定申告に含める必要が生じます。海外で課税されるものは、外国税額控除による二重課税調整の検討対象になります。

給与の課税判定が「支払日基準」で効いてきます。 給与は勤務地ではなく支給日(支給期)がいつ到来したかで判定するのが原則です(No.2518)。居住者になった後に支給期が到来した給与は、海外勤務期間に対応する部分を含んでいても、原則全額が課税対象になり得ます(帰国年の給与の解説参照)。「切り替わり前の勤務分だから関係ない」とはならない点が、帰国年で最も誤解の多いポイントです。

資産の受け取りタイミングの意味が変わります。 海外の年金・退職一時金などは、一般論として、居住者になる前に受け取りが完了していれば日本の所得税の対象外となるのが原則です。居住者になった後の受け取りは課税対象に含まれ得ます。どちらに該当するか・どう設計するかは、資産の種類と受け取り方法によって変わる個別判断の領域です。

帰国年〜翌年以降: 切り替わり後に続くこと

帰国年の確定申告は「2つの期間の合算」になります。 非居住者期間の国内源泉所得と、居住者期間のすべての所得を、1枚の申告書で合計して計算します(No.1935)。詳しくは帰国年の確定申告 完全ガイドをご覧ください。

帰国翌年以降は、通常の居住者として毎年続きます。 海外に資産を残していれば、その利子・配当・賃貸収入は毎年の申告対象になり続けます。また、12月31日時点で5,000万円を超える国外財産を持つ場合は、国外財産調書の提出義務が生じます(No.7456。国外財産調書の解説参照)。切り替わりは一度きりですが、その影響は毎年続きます。

例外: 「非永住者」に当たる場合

日本国籍がなく、過去10年以内の国内居住期間が合計5年以下の方は「非永住者」に区分されます(No.2010)。非永住者の間は、国外源泉所得のうち日本国内で支払われたもの、または国外から日本へ送金されたものだけが課税対象に加わります(いわゆる送金課税)。

外国籍の配偶者と帰国するご家庭では、本人は全世界所得課税・配偶者は非永住者という形で世帯内で課税範囲が分かれることがあり、海外からの送金のタイミング・名義が実務上の論点になります。該当し得る方は、送金の前に一度立ち止まって確認することをおすすめします。

切り替わり前後のチェックリスト

  • 自分(と家族それぞれ)の帰国日・居住者になる日を整理した
  • 帰国後に支給期が到来する給与・賞与の有無と支給日を確認した
  • 海外の年金・一時金など、受け取りタイミングを選べる資産を棚卸しした
  • 海外に残す口座・不動産・資産の、帰国後の所得(利子・配当・賃料)を把握した
  • 外国籍の家族がいる場合、非永住者該当性と送金の予定を確認した
  • 国外財産が12月31日時点で5,000万円を超えそうか概算した

よくある誤解

「帰国した年の12月31日までは非居住者扱い」 — 区分は年の途中、帰国日を境に切り替わります。年単位ではありません。

「海外勤務分の給与は切り替わり後でも日本と無関係」 — 原則は支払日基準です。居住者になった後に支給されたものは、海外勤務分を含めて課税対象になり得ます。

「海外の資産は日本に持ち込まなければ課税されない」 — 非永住者以外の居住者は、送金の有無にかかわらず全世界の所得が課税対象です。送金課税の仕組みが働くのは非永住者に限られます。

「切り替わりの手続きをどこかに届け出る必要がある」 — 居住者への切り替わりは事実(入国日と生活の本拠)によって決まるもので、税務署への切替届出で決まるものではありません。手続きが要るのは、その後の確定申告や調書の段階です。

相談するタイミング

切り替わりに関する意思決定 — 受け取りタイミングの設計、送金の順序、帰国日の調整 — は、居住者になる前にしかできないものが多くあります。帰国日が確定する前のご相談がいちばん選択肢を残せます。すでに帰国済みの方は、帰国年の申告に向けて、海外所得と支給日の整理からご一緒します。

当事務所では、まず15分の無料オリエンテーションで対応可否と進め方をご案内し、個別の判断が必要な内容は資料を拝見した上で個別相談にてお答えしています。

参考資料(公式)

※ 本記事は一般的な情報の整理であり、個別のご事情(帰国日、給与の支給形態、資産の内容、ご家族の国籍など)によって結論が変わります。ご自身のケースへの当てはめは、資料を確認した上での個別のご相談をご利用ください。

監修この記事の監修浅井匠也(税理士・公認会計士)プロフィール →

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本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を行うものではありません。 記載内容は公開日または最終更新日時点の法令等に基づいています。 個別のご事情への適用については、必ず税理士等の専門家にご確認ください。
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