先日、国税庁から国外財産調書制度のFAQの改訂版(令和8年8月)が公表されましたね。
全53問・40ページ超のボリュームで、正直、通読するのはなかなか骨が折れました。ただ、帰国者の調書を毎年作っている身としては、「ここが明文化されたのはありがたい」と感じるポイントがいくつもあったので、今日はその中から3つご紹介します。
その1: 未行使のストックオプションは「書かなくていい」場合がある
個人的にいちばん実務に効くと思ったのが、ストックオプションの扱いです(問24)。
FAQでは、SOに関する権利の評価方法((12月31日の株価 − 行使価額)× 株数)が示されているのに加えて、12月31日時点で権利行使可能期間に入っていないSOは、調書に記載しなくてよいことが明記されています。
海外勤務中に付与されたSOを大量に持って帰国される方は珍しくありません。「未vestの分まで全部評価するのか?」というのは毎年悩ましい論点だったので、線引きがはっきり示されたのは実務者としてありがたい限りです。
その2: 401(k)のような確定拠出型年金は「解約返戻金相当額」で評価できる
問31では、国外で加入した確定拠出型年金に関する権利について、12月31日にその契約を解約したとした場合の解約返戻金の額で評価してよいという整理が示されています。
IRAや401(k)の「調書にどう書くか」は、帰国者の調書作成で必ずと言っていいほど登場するテーマです。財産区分(何の財産として書くか)には依然として整理の余地が残るものの、評価額の物差しが示されたことで、実務はだいぶ進めやすくなったと感じます。
その3: ジョイントアカウントは「持分が不明なら半分ずつ」
米国などで夫婦のジョイントアカウントをお持ちの方は多いですよね。問15では、共有財産について持分が定まっていればその持分で按分、明らかでなければ各共有者の持分は相等しいものと推定して按分するという整理が、joint account・joint tenancyといった海外の共有形態にも当てはまることが示されています。
もっとも、その手前には「そもそもこの口座は誰の財産なのか」という、名義と資金拠出の関係の整理が残ります。ここは相変わらず、資料を並べて個別に考えるほかない領域です。
通読しての感想
今回の改訂で、暗号資産やNFTまでFAQに登場するようになりました(問36・37)。海外のマーケットプレイスで買ったNFTが国外財産調書の対象になるか、という問いに国税庁が正面から答える時代になったわけです。制度が現実の資産の多様化を追いかけているのが伝わってきて、読み物としても面白い改訂でした。
当サイトの国外財産調書の解説記事も、この令和8年8月版FAQを反映した内容に更新済みです。年末の残高集めはこれからが本番の時期ですので、海外に資産を残して帰国された方は、早めに資料の取得経路を確認しておくことをおすすめします。
※ コラムでも個別の税務判断は行っていません。ご自身のケースへの当てはめは個別相談をご利用ください。